赤坂金型彫刻所からのお知らせ

2025年2月27日

「ものづくりマイスター」派遣指導

2023年11月から2024年2月にかけて、厚生労働省「ものづくりマイスター」制度に基づく派遣指導として、
三か月間にわたり、5軸加工機とAIを組み合わせた“実践型ものづくり教育”を行いました。

教える場は、教わる場でもありました。

受講者は、まだ20代。
しかし彼の中には、ものづくりに対する真っすぐな情熱と、柔らかな知性がありました。
FusionやBlender、AIによる形状生成にも迷いなく向き合い、
こちらが用意した課題を、すべて“自分のテーマ”として咀嚼し、実加工によって形にしていく。
その姿には、講師である私が心を動かされる瞬間が幾度となくありました。

時に私は、教えているというより、未来と対話しているような気持ちになったのです。

 

私がこの指導に招かれた理由は、
「5軸加工機やAIを、現場レベルで指導できる人材が、現状では他にいなかったから」でした。
ですが、私一人が選ばれたのではありません。
赤坂金型彫刻所が三代にわたって受け継いできた、“矜持”と“思想”を刻む技術が、呼ばれたのだと感じています。

この三か月は、“知識を授ける”時間ではありませんでした。
構想から造形へ──思いを刻む技術と感性の対話だったと、今ではそう思います。

ものづくりとは、図面を描くだけでも、刃を走らせるだけでもありません。
変わらぬ信念と、変わり続ける技術。
「不易流行」の思想を携えながら、何を残すべきかを問い、何を変えるべきかを選び取る。
そこにこそ、“職人の不動”があるのではないでしょうか。

若き才能とともに過ごした日々は、私自身の中にも、新たな火を灯してくれました。

技を伝えるとは、未来を信じること。
この三か月は、その祈りの時間だったのかもしれません。

 

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